コンプライアンスや説明責任が問われる昨今、論文執筆においても倫理規範の遵守に対する関心が高まっております。論文中の記述が不十分または不適切であるために、意図せずに不正とみなされてしまうことは避けなければなりません。最悪の場合、論文撤回の対象となる可能性もあります。このため、国際的なガイドラインを理解し、論文中に適切に記述することが大切です。
以下に、論文執筆にかかわるおもな国際的ガイドラインと、それらに基づき、出版倫理の観点から注意すべき点と対策をまとめました。
論文の出版倫理に関するおもな国際的ガイドライン
●International Committee of Medical Journal Editors(ICMJE)による「Recommendations for the Conduct, Reporting, Editing, and Publication of Scholarly Work in Medical Journals」:医学雑誌における研究報告の出版倫理に関する国際的基準を定めており、著者資格、利益相反の開示、二重投稿・掲載等について規定している。
●International Society for Medical Publication Professionals(ISMPP)による「Good Publication Practice for Communicating Company-Sponsored Medical Research: GPP3」:企業主宰による医学研究の公表を取り上げ、実施基準と情報開示について規定している。
●Committee on Publication Ethics(COPE)によるガイドラインと助言:出版社およびジャーナル編集者に向けて、出版倫理にかかわる様々な局面を取り上げ、指針と助言を提供している。
論文執筆時における注意点と対策
出版の原則
●不正行為(捏造、盗用、剽窃など)を行わない
➡データの捏造や盗用はもとより、剽窃についても正しく理解する。とくに、自己剽窃について意図せず行ってしまう場合があるので注意
●二重投稿・掲載を行わない
➡二重投稿・掲載と許容される二次掲載について正しく理解する
✅ほかのジャーナルに投稿中でない旨をカバーレターに記載する
✅学会発表を行っている場合は、その詳細を本文およびカバーレターに記載する
✅図表を二次掲載している場合は転載許可を取得し、その旨を論文中に記載する
●臨床研究はネガティブな結果を含め、原則としてすべての結果を公表する
➡適切なデータ公開(患者の非特定化等)について理解し、データ公開の方法について論文中に記載する
研究倫理
●ヒトまたは動物を対象とする研究において、必要とされる倫理要件を満たす
➡研究が倫理規定に従って実施されたことを論文中(おもにMethods)に記載する
※臨床研究に関する倫理的配慮の記載法については、こちらをご参照ください
●研究の種類別に定められたガイドラインに従って研究報告を行う
➡各種ガイドラインで規定されている事項に従い、必要事項を準備する(例:ランダム化比較試験ではCONSORTチェックリスト・フローチャートを作成する)
➡臨床試験は事前に公的機関に登録し、論文中に登録機関と登録番号を記載する
論文著者に関する要件
●論文著者に関わる以下の事項を正しく理解する
✅著者資格を満たす著者と貢献者の定義
✅著者の利益相反の開示
✅資金提供者の役割
✅メディカルライターとゴーストライターの違い
➡論文中、「Author Contribution」、「Conflicts of interest」、「Acknowledgements」等の各項目に必要事項を記載する
▶『英文臨床研究論文の書き方』(電子書籍版)では、上記のガイドラインの解説と論文への記載例(英文 / 和訳)を紹介しています。詳しくはこちらをご参照ください。